エネルギー・電力問題(2) 温暖化で原発の退路を断つ・・・アングロサクソンの作戦のすごさ
http://takedanet.com/2013/01/post_e39c.html
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(音声が中心で、以下はそのアブストラクトです)
日本人ばかりでは無く、世界の多くの民族がアングロサクソン(イギリス、アメリカ)の論理と計画にかなわないのは、彼らは次のように考えているからです.
1)この世に「正義」というのは無い、
2)もし「正義」があるとしたら、自らが得をすることを言う、
3)しかし、他人が「自分の正義」を納得しないと正義は実施することができない、
4)他人が「自分の正義が正義」と思わせるためには「学問」が必要である、
5)従って他人より優れた学問を作り、それを使って自分の正義を納得させる、
ということです。
人間がライオンを捕らえて檻にいれて見物しているのは「正義」ではありません。でも、人間の知恵がライオンを大きく上回っていることによります。ライオンは自らの正義を主張することすらできません.
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イギリスがかつて小国でありながら、世界の七つの海を支配しても「正義」と思われたのは、ヨーロッパの学問に基づく「正義」があったからです.また、アメリカがアメリカ大陸の東にできた13州の小国をアメリカ大陸と太平洋を支配する巨大になっても「侵略者」とか「膨張主義」と呼ばれないのも、この「転換」がうまくいったからです.
その点で小さいですが、彼ら流儀の「正当化」の例に「原発の正当性」があります。原発を正当化するために、彼らの立てた戦略は、
1)原発の安全性は正面から議論しない、
2)CO2を出すと地球が温暖化するとの「怯え」を与える、
3)原発が火力とほぼ同じCO2を出す(建設時、濃縮、再処理など)ことは言わない、
4)原発の安全性が問題になったら、「火力はCO2を出す」と脅す、
5)エネルギーを知らない人は「自然エネルギー」と言うだろう、
6)そのうち、自然エネルギーが自然を破壊することがわかる、
7)再び原子力に帰ってくる、
でしたが、現在の日本はそれと同じ経過をたどっています。
(平成25年1月5日)
武田邦彦
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エネルギー・電力問題(1) 電気代値上げトリック・・経産省は値上げを認めてはいけない
http://takedanet.com/2012/12/post_6647.html
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原発を再稼働しないと電気代が高くなると言い、事実、関西電力や九州電力は電気代の値上げを申請する構えです.でも、この話は大きなトリックが含まれています。電気代は企業にとっても家庭にとっても大切ですから、政治家や知識人、マスコミなどにダマされないように正しい知識をつけたいと思います.
また値上げ申請を審査する経産省は「電力の株主」ではなく、「国民の税金で運営されているところ」ですから、値上げ申請を認めず、もし電力が倒産したら、それを機会に分割すれば良いと考えられます。
電気の売り上げは日本全体で約15兆円。そのうち原発は約3兆円.そこで「原発を止めたら大変だ。年間3兆円の負担が増える.それに加えて石油などを輸入しなければならないので、その負担がある」と説明されます.
まず、年間3兆円ということですが、原発に出している直接的な税金が年間5000億円.それに地元対策、自治体の負担、政治家への献金などが約2000億円.電力が原発などを維持するために負担している広告宣伝費が1000億円で、約8000億円ですから、原発を止める事によって発生する損害は、約2兆円ということになります。
さらに原料の濃縮ウランを売れば(高く売れます)、電力費の30%程度ですから、さらに1兆円が浮きます.原発を止めても本当は1兆円程度の損害でしょう.
もっとも費用がかかるのは「原発をある程度やって、ある程度は停止する」というもので、この場合は相変わらず「原発対策費」は必要となり、かつ原発の廃炉の経費もかかるということになります。これが現在の政策です.
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次に、日本は1.8億キロワットの電気を生産していて、この電気は原発が無くなっても「すでに日本国内にある火力発電所を稼働すればOK」という状態ですであることを良く理解しなければなりません.つまり、とりあえずは施設を作らなくても良いので、損害は「原発を動かさない」と言うことだけです。
火力発電所を稼働させれば、原発は要らないことはすでにIEA(国際エネルギー機関)やその他の方が指摘しています.このシリーズですでに解説し、さらに今後どこかでこの問題も取り上げますが、ここでは「休んでいる火力発電所を動かせば大丈夫」ということです。
火力発電所を稼働させるためには「石油などの燃料」を輸入する必要がありますが、輸入のお金は国民が電気代として払いますので、「購入する石油が余計にかかる」というは論理のトリックです.
たとえば、トヨタの自動車が好調に売れているので、10%増産をするとします.そうすると、トヨタは現在より、鉄鋼や石油を10%多く輸入しなければなりません.もしこれが「日本の負担」、つまり負の負担になるのでしたら、「トヨタの国内工場が好調で増産する」ことは「日本の負担を増やす」事になります。
でもそんなことを知識人やマスコミが発言したことはありません.トヨタの車が増産されることは日本の工業を盛んにすることで日本が発展し、輸入分の「ドルの流出」は輸出などでカバーされ、おつりが来ます.また国民が豊かになり、その分だけ活動量が増えるので、それでも国は発展します.
何でも増産すれば、石油も鉄鉱石も輸入量が増えるのですが、それが「損失になる」などということはこれまで政府、知識人、経済学者、マスコミが一度も言ったことはありません.くり返しますが、「火力発電所を動かせば石油を買わなければならない。その分だけ日本は赤字になる」という論理では「今後、どんな産業でも日本でやると赤字になる」ということと同じです.
電気もそうで、電気を増産して値段が安くなると、生産が盛んになり輸出が伸び、国民の生活が快適になります.単に輸入量を減らすというのでは、日本は衰退します.狙いがよくわかりますね.
もともと、アメリカは8億キロワットを生産し、原発比率は日本の2分の1、電気代は日本の2分の1、送電線は長く、燃料費は日本と同じです.まず電気代を2分の1にする必要があります。これは「鉄鋼業と電力業の類似性」ですでに証明されていますが、現在の電力の経営陣が交代しないと、あまりに甘い体質なので無理と思います。
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つまり、戦時体制である電力会社の独占を元に戻して自由競争にして、加えて原発も「自分のお金とリスクでやりなさい」と言えば自然に原発をやる電力会社はなくなります。
次に、火力発電所を増やし、1.8億キロワットの生産を3.6億キロワットにしますと、電気代は2分の1になり、日本は豊かになるという政策がもっとも適切でしょう。簡単に言うと次の通りです.
1)日本人のことを考えれば、原発を止めて火力発電にする、
2)発電量を1.8億キロワットから3。6億キロワットに上げる、
3)電力弾性率を1.0とすると、電力総売上は30兆円になり、は15兆円あがるので、兆円から2兆円の損害をけすことができる、
4)原発の損失が15年ほどで消えるので、その時に電気代を2分の1にする、
5)「原発を止めると電気代が上がる」というのは「原発の利権8000億円から1兆円をとり続けたいから電気代が上がるという」と言うことと考えられます。
いわゆる「原子力村」と言われるグループの利権と権力はかなり強く、自民党も長く便宜を受けているので、「税金も使う、電気代も上がる」ということになりますが、企業も大きな負担を受けるので、企業(たとえば経団連や中小企業連合会)がどのような態度にでるのかが注目されます.
(平成24年12月24日)
武田邦彦
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